七芒星

不可能を可能にする

映画「溺れるナイフ」について語ってみた。

 

 

溺れるナイフ」の映画化が決まり、我らが重岡大毅が出演することが発表されたのが2016年3月。役柄は、ヒロインである夏芽に一途に恋をして優しく支え続けるものの、彼女の一番になることができなかった、いわゆる良いヤツ「大友」。

 

 

 

 

当時の正直な心境は、こうだった。

 

「えっ、私が思ってる大友と違う。」

 

重岡くん、ごめん。

 

 

 

まあ私が原作を読んだのは何年も前で、しかも途中で購入をやめてしまっている。(作品がどうこうと言うより、単行本というものを買わなくなってしまった)

少なくとも私のTLは、大友は重岡くんにハマり役だと言う声で溢れていたのに、密かにずっと違和感を感じていたわけで。(途中までしか読んでないけど)

 

 

まあ、そんな違和感はどうでも良い。漫画を途中までしか読んでいない私の勝手なイメージなんてどうでも良い。兎にも角にも、重岡くんが良い役を貰ったんだ!メインキャストだ!菅田くんと共演だ!!嬉しくないわけがない!!!……はずだった。ほんとに。

 

浮かれたのも束の間、映画の公開日まで私の頭を悩ませる問題が浮上してきた。

 

 

 

重岡くんの初キスシーン。

 

 

ちょっと待ってくれ。それはまだ早い。心の準備ができていない。映画は観たい。でも重岡くんのキスシーンが観たいわけではない。どうしたらいい。

 

 

そんな葛藤を続けた結果、私は公開日までなるべく映画のことを考えないことにした(いわゆる現実逃避)

夏になり、恒例行事である松竹座の舞台ANOTHERに通いながら、「公開日がANOTHER期間中だったら良いのに…映画観てフラフラになっても松竹座で癒してもらえるのに…」と嘆いていたら、友だちから「その傷をDKで癒そうとするのやめなよ」と、ごもっともなツッコミを受けた。

 

 

そして2016年11月5日。とうとう「溺れるナイフ」の公開日がやってきた。キャスト発表から約8ヶ月……長かった。重岡くんのキスシーンがしんどすぎて、映画を観に行くかどうか悩むとまで嘆いていたくせに、なんだかんだ前売り券は購入していた。そしてなんだかんだ公開初日に映画館に足を運んでいた。

 

 

 

 

そして劇場が暗くなり、映画が始まった。

(ここからネタバレ、批判的な感想も含まれるのでご理解いただける方のみお付き合いください)

 

 

 

 

 

 

 

 

 

序盤で早くもストーリーの展開についていけない。(まず夏芽が鳥居のある立ち入り禁止区域に、アッサリ足を踏み入れすぎて驚いた)もちろん菅田くんが演じるコウちゃんは美しい。もうコウちゃんにしか見えない。そして重岡くん演じる大友………いや、大友というより重岡くんだ。まんま重岡くんだ。夏芽とふたりでバッティングセンターでアイスを食べたり、バッティングを楽しむ姿に、「いや、それただの重岡くんの日常やん???」と声を出してツッコミたかった。あとアイスをかじるシーンは1テイクで成功したかな…お腹大丈夫かな…なんてことも考えた。(アイスを食べかけの状態で捨てていたのは演出でもショックだったぞ…!)

 

映画の中の大友は、笑ってしまうほど重岡くんでしかなかったけど、重岡くんは監督から出される細かい指示の中で、きっと自然体の姿を見せられるように考えながら演技をしていたんだと思う。重岡くんに失礼だ!と言われてしまうだろうけど、私はやっぱり「ジョージ朝倉先生が描く大友」と「重岡大毅が演じる大友」は、全く別物だと思った。その考えは、映画を観る前も観終わった後も変わらなかった。でも、それで良い。自然体な重岡大毅が世間に評価されているなら、それで良い。

 

そして映画の中の大友を重岡くんとしてしか見られないまま、私を8ヶ月間悩み苦しめてきた問題のシーンがやってきた。夏芽が近くで着替えているのをドキドキしながら待つ大友(かわいい)。塗ったばかりの夏芽のペディキュアを「お洒落さんやな」と褒める大友(かわいい)。眉毛まゆげといじられる大友(かわいい)。コウちゃんのことが好きな夏芽の気持ちを考え、「友だちやろ!」と明るく振る舞う大友(頑張れ)。友だち同士ふざけ合って、夏芽の心を解きほぐす大友(頑張れ)。「まゆげ!」「まゆげ!」とお互いの眉毛をいじってふざけ合い笑いながら、

 

 

はい、キスした、しましたよ。

 

 

 

いや、友だちって言うてたやん??なんなら強調してたやん???その流れで普通キスする???という感情と、キスしたあとに一瞬見せる真剣な表情に「妄想のまんまの重岡くんだ!ありがとう!!」「ああでもやっぱりまだ見たくなかった!!まだ早い!!」という感情、いろんな感情が爆発しそうになって一瞬息が止まりました。

 

見終わった直後は本当にしんどかった…ほんとに…でもこのしんどさとかモヤモヤは、果たしてキスシーンだけのせいなのか…?とずっと考えてて。TLで見かける限り、この映画の評判はすこぶる良い。キャストへの評価も高い。そんな中で、同じく悶々とした気持ちを抱えた重岡担の友だちと、連夜に渡ってこの作品について語ることになった。そしてモヤモヤの原因になったと思われる感情や疑問を、ここに吐き出してしまおうと思う。

 

 

元々、私はジョージ朝倉先生の作品が好きで、その流れで溺れるナイフも買って読んでいた。まあ冒頭でも話したとおり、途中で買うのをやめてしまったので何を偉そうにって話なんだけど。あと、" 映画 "に関してもそんなにたくさんの作品を観てきたわけでもないし、難しいことは全くわからない。ただ、先生のインタビュー記事を読んでひどく納得したので、もしこのつまらないブログを読んでくれている方がいらっしゃったら先生のコメントも読んでいただきたい。(以下、引用記事)

 

―2人が演じる夏芽とコウはいかがでしたか?

違和感無かったです。"夏芽はこんなことしないよ!"とは思わなかったし。どこかで映画は映画と思って見ているところがあるので、原作と比べてどうだとは思わなかったですね。

―まったく別の物語みたいな?

すごく乖離しているという意味ではなく、別次元の作品というような。映画と漫画ではそもそも表現方法が違いますし、原作をそのままなぞってもしょうがないじゃないですか。今回の映画は監督の頭の中にある"『溺れるナイフ』2時間版"という別の作品を見せてもらえた感じで、それは私の中にある『溺れるナイフ』と違っていて当たり前なんです。

映画『溺れるナイフ』原作者 ジョージ朝倉インタヴュー:「毒にも薬にもなる作品にしたかった」 | Rolling Stone(ローリングストーン) 日本版

 

 

 溺れるナイフ』2時間版。これ!引っかかっていたのはこれだ!重岡くんのキスシーンだけが問題ではなかったんだ!!(もちろんそれを思い出しては度々ウッとなるけど)

 

 

しかし、あの内容をどうやって2時間そこらで表現するんだろう…前後編の二部構成も有り得るのかな……?

— サキ (@_sk817) 2016年3月6日

 

正直、腑に落ちない部分が多い作品だった。十巻以上続く長編漫画を2時間で表現しなければいけない。求めすぎていることはわかっているけど、原作で描かれていた夏芽の強さとか、大友の優しさに応えようと自分も歩み寄る努力をする夏芽の成長とか、映画のどこで描かれてたのか?私が汲み取れなかっただけなのか?そもそもコウちゃんと夏芽はどの感情を持ってしてくっついたのか?とか、コウちゃんと大友の男の友情は何処へ!?カナちゃんわりと重要な役だと思うんだけど出番少なすぎない!?キャストの使い方もったいなくない!?夏芽とコウちゃんめっちゃ走らせるのもいいけど、もっと大切な心理描写があるやん!?そんな生き急がんと、もっと呼吸して!?みたいな。まあ、やっぱりあの内容を2時間の実写で表現するには限界もあるので…ジョージ朝倉先生がおっしゃっているように 『溺れるナイフ』2時間版という別作品として観たら良かったんだなと。

 

 今回は、好きな漫画家さんと好きな人(重岡くん)が絡んでいる作品ということもあって見る目が厳しくなった部分もあるわけで。カメラワークとかは斬新だと思ったし、こんな撮り方もあるんだなと。多分すごく独特の感性を持たれている監督なので、今後の作品には期待してる。きっと面白い作品を生み出してくれると思う。次に他の作品を世に出すときは、それも観てみたい。なにより重岡くんを見つけてくださったことに感謝。

 

 

そして途中で読むのをやめてしまった漫画「溺れるナイフ」ですが、改めてもう一度最初から読み直したいなと思いました。ジョージ朝倉先生もこうおっしゃってますし……

 

 

 

 

細かい心理描写や絵の美しさ、面白さは原作を読まなきゃ伝わらない。映画はキャストの美しさと世界観を楽しめる。観る人によって、感想や捉え方も本当にさまざまだなと思った作品でした。この映画は、5年後ぐらいに改めてもう一度観たいかも。(と言いつつBlu-ray発売されたら買ってそう)